にわとこ                          中村文子

 東京大学の辻誠一郎先生が「にわとこで縄文人が酒を造っていた」の一言に異常に反応してしまい、にわとこ探しの旅が始まりました。にわとこは春、雪が消えると、どの木より一番最初に芽吹くので、簡単に見つけることができます。5月の中頃、白や薄黄みどりの可憐な花が枝一杯に咲き、その美しさは弘前城の桜に負けないくらいです。その後、赤い実をたわわにつけます。露に濡れた赤い実をじっと観察しているとあまりの鮮やかさにくらくらし、めまいがしてきます。こんな可憐で鮮やかな実をつけるにわとこを庭に植えている人は見たことがありません。なぜなら、葉が出るとかなりの臭いをまき散らします。思わず息を止めたくなります。
 その臭いが今我が家の狭い庭に充満しています。夏に窓を開けるとじんわり臭ってきます。採集した種を乾燥させているうちに風で飛び、いつの間にか根をはり、成長していました。それも1本ではなく、7本も。発芽条件なんて全く関係なく、たくましく、さすが縄文の植物、お見事というしかありません。「あんたが連れてきたんでしょう。責任とってね」と言わんばかりに日に日に成長し続けています。美しい花が咲くまでまだまだ時間がかかりそうなので、しばらくはこの臭いとお付き合いしなければなりません。

(三内丸山縄文発信の会会員・青森県青森市在住)